楽京の事あれこれ

◇そもそもラッキョウとは◇

 

 ラッキョウは学名をアリウムチャイニーズと言い、中国およびヒマラヤ地方が原産のユリ科の多年草で、植物学上ではネギ属に分類されます。
ネギ類は食用としてはラッキョウのほかにニンニク、ネギ、タマネギ、ニラ、ノビル、ワケギなどがあります。

 これらは特有の臭気と辛みを持ったものばかりで、アリウム属といいます。
アリウムとは、独特の臭気を出す成分の名称で、臭気の強い植物をアリウム属と呼びます。
アリウム属には、体を温める作用や強壮作用を持つ植物が多い中で、ラッキョウは心臓を丈夫にする
食べ物として知られていて古くから薬用、食用に用いられていました。
 ラッキョウは夏から秋に鱗茎(球根)を植えると、晩
秋の頃にあでやかではありませんが紅紫色のピンク
がかったかわいい花をつけ、春に鱗茎からやわらか
で青緑色の葉が茂り、新しい鱗茎ができます。

 鱗茎はご存じの通り白い色をしていて形がユリ根
に似ていますが、強い匂いと辛みを持っています。

 おそらく紀元前から栽培されていたと見られており、
日本への渡来時期については不明ですが、徳川時
代にはすでに全国各地で栽培されています。

 「牧野新日本植物図鑑」によれば、ラッキョウの名は辣韮の音読みがなまったものだそうで、とくに砂地を好み、海岸線や砂の多いところで盛んに栽培されています。

 生のラッキョウは入梅の前後に八百屋の店先に並びます。 ニンニク片より一回り大きい白い粒で、ニラのような細い菜がついていることもあります。

 ラッキョウは甘酢漬けでおなじみですが、句には生のままみそをつけて食べるのもおいしいものです。

 ラッキョウ100cには、カルシウム16_c、リン23_c、鉄1_c、ナトリウム940_c、食物繊維0.6_cのほか、たんぱく質、糖質、脂質、ビタミンB1、B2等が含まれています。

◇古典に登場するラッキョウ◇

 

 二世紀ごろ書かれた漢方医学の古典である「金匱要略」という書物に、括呂薤白白酒湯、括呂薤白半夏湯(乾燥させたラッキョウの漢方薬名が薤白)という処方が載っていますし、中国古代の自然地理書である「山海経」にもラッキョウの記述が載っています。

 明時代の薬学書の「本草網目」には、「掘った鱗茎地下茎を火にくべて食べるので世俗では火葱と呼んでいる」と載っていますし、「心病は宜しくこれを食すべく、産婦に利あり」、「煮て食すれば寒さに耐え、中(おなか)を調え、不足を補い、下痢を止め、人を肥健に する」、「身を軽くして飢えず、老いに耐えしむ」等と、いろいろな薬効が載っています。

 「延喜式」(九二七年にまとめられた平安時代の宮中儀式や諸国の恒例などを記した律令の施行細則)には、典薬寮(宮中の医薬などをつかさどった役所)の元日御薬の中にラッキョウの漢名が出てきますし、ラッキョウが寝汗を治す薬として使われたことが書かれています。

 平安時代の漢和辞典である「新撰字鏡」にはナメミラという名で、「和名類聚抄」にはオホミラという名で、ラッキョウが登場しています。
 江戸時代に小野蘭山が書いた「本草網目啓蒙」には「筑前(福岡県)では乾かして皮を取り、酒醋醤油(醋は酢のこと)の濃い煎じ汁に漬けて 密封後二ヵ月たったものをランキョウという」とあり、「薩州(鹿児島県)では酢砂糖を煮て、その汁に漬け一年後に酒のさかなにする」とあります。

 貝原益軒は「大和本草」の中で「糖と酢につけて食す」と述べています。

 江戸初期に宮崎安貞が著した「農業全書」には、ラッキョウの薬効について、「人を補い温め、また学問する人が食べれば、神に通じ魂魄(たましい)を安ずる」と書かれています。

 また、「愚雑爼」という本には「腹痛がひどくてどうしても治らず、日数がたって手のほどこしようがなく、医師も手をこまねいたときに薤白湯(ラッキョウを煎じた汁)を飲んで疼痛(うずくような痛み)が治った人があった」と書かれています。

 寺島良安という医師が著した「和漢三才図絵」には、やけどのぬり薬や婦人病の治療に使われたと載っています。

◇ラッキョウの多彩な薬効◇

 

 ラッキョウは、梅干しとならんで日本の代表的な保存食の一つで、大変な薬効を秘めた食品です。

 江戸時代には、野菜として広く栽培され、酢漬けや塩漬けのラッキョウが各地に広まっていて、一般に食べられだしたようですし、一方では民間薬としても珍重されて、いろいろな使い方がなされました。

 たとえば、虫刺されや切り傷にラッキョウをすりおろしてぬる、のどが腫れて痛むときはラッキョウを酢といっしょにつきつぶして貼ったりしたようです。

 このほか変わったところでは、のどに魚の小骨がひっかかったときに酢漬けのラッキョウを食べると取れやすい、トゲや針が刺さったときに生のラッキョウをすり込むとよいなど、効能もさまざまです。

 脳卒中で倒れた人の意識を回復させるのに生のラッキョウの汁を鼻からたらし込む、毒へビにかまれたときの毒消しに汁をつける、といった救急療法にも使われてきました。

 ラッキョウは、ズキズキとする胸の痛みや胸が締めつけられるような症状に効果のある食品です。
酢漬けでも塩漬けでも狭心症発作の予防に効果があります。
ラッキョウのこのような薬効を漢方では、「行気止痛」といいます。
これは体内をめぐる生命エネルギーの流れをよくして痛みを止める働きをし、狭心症、肋間神経痛で胸や 背中が刺すような痛みのするときなどに効果を発揮します。

 ラッキョウのすりつぶした汁を飲むと、内臓や血管などを構成する筋肉である平滑筋が刺激されたあと抑制されることが実験で確かめられたり、胸痛に対する有効性が示唆されています。

 考えごとが多かったり、些細なことでクヨクヨしたりすると、ストレスによって胃腸の働きが阻害され、おなかの中にガスがたまり、食べるとすぐにもたれる、ゲップやオナラが出るという症状がでますが、これを気滞(気という生命エネルギーのとどこおり)といい、ラッキョウには気滞を改善する「理気」という効果があります。

 アレルギーとはある物質に対して起こる異常に過敏な反応ですが、ラッキョウには強壮作用があり、この強壮作用によって免疫力が高まり、この過敏な反応を防ぐことができるので、直接アレルギーに効くというのではありませんが、アレルギー体質であっても発作を起こりにくくします。

 ラッキョウやニンニクなどの抽出物には、平滑筋(血管や内臓などを形成している筋肉)の興奮を抑制する働きがあります。

 ラッキョウを常食すると、発作をすぐにしずめるというような即効性はありませんが、狭心症の人の心臓を取り巻く冠状動脈を拡張し、ぜんそくの人は気管支のけいれんがしずまり、タンの切がよくなるという効果があります。

 ラッキョウは胃腸の働きを助け、腹痛や下痢を止める作用もあります。

 生のラッキョウをおかゆに入れて炊くと、下痢によく効くといわれていますが、緊張した,筋肉をやわらげ、胃の粘膜を丈夫にし、胃腸の働きが促進されて消化吸収活動が活発になると同時に、腹痛や下痢が止まってきます。

 胃が冷えて、もたれるような症状にもよく効きます。

 ラッキョウは寝つきが悪い、熟睡できない、朝早く目覚めてしまうなど、不眠を訴える人にも効果があります。
独特の辛みに特効があり、辛みの成分である硫化アリルの働きで神経を刺激し、消化液の分泌を促し、血液の循環もよくしてくれます。
血液の循環がよくなると心身のバランスも取れ、精神もしだいに安定しますので、ラッキョウの漬物を毎日二〜三個食べれば、がんこな不眠症も自然に解消されます。

 甘酢漬けのラッキョウには、酢と砂糖の薬効が加味されています。
酢には食欲を増進する作用や殺菌作用があり、砂糖にも神経をやすらかにする作用のあることが昔から知られています。
良質の酢には、カルシウム、ナトリウム、カリウムのほか、ビタミンBなどが多量に含まれています。
とくに、酢には炎症を鎮める作用があるため、ラッキョウとの相乗効果により、胃の不快症状の解消に高い効果を示します。

 カレーのつけ合わせにラッキョウが出ますが、カレーに含まれる香辛料が慣れない人には強いので、ラッキョウによって、もたれや胃痞(胃の部分がかたくむすばれているような状態)を防ぐという意味があるのです。

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